生殖内分泌分野

月経に関わるトラブルや不妊でお悩みの方に
生殖内分泌部門では子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮筋腫といったエストロゲン依存性疾患の診療・研究を行っております。これらの疾患は月経困難や慢性骨盤痛などの症状をきたし女性のQOLを著しく低下させます。特に生殖年齢女性では不妊の原因にもなりうるため、その診断や治療の重要性は増しています。
治療としてはホルモン剤を用いた治療や腹腔鏡手術などが挙げられます。当科の腹腔鏡下手術の歴史は古く、1985年から診断腹腔鏡を開始し、1992年にはわが国最初の全腹腔鏡下子宮全摘術を発表しました。現在も腹腔鏡下深部子宮内膜症切除術などで代表されるようにわが国有数の施設となっています。2018年4月には子宮筋腫や子宮腺筋症などの良性子宮疾患に対してロボット支援手術が保険適用となり、当科でもその件数は年々増加しています。粘膜下の小筋腫や内膜病変が疑われる症例に対しては細径子宮鏡を導入し、これまでより迅速かつ効率的に診断・治療を行えるようになりました。子宮内膜症においては手術後の再発抑制も重要な課題であり、術式の工夫と手術後のホルモン剤投与により良好な成績が得られています。
また、若年がん患者に対する妊孕性温存治療も積極的に行なっており、そのような患者さんに対しがん治療開始前に胚凍結や未受精卵子凍結、卵巣組織凍結、精子凍結等を数多く施行しています。

不妊外来

妊娠活動を始めて半年で妊娠にいたらない場合は不妊検査を受けることをお勧めします。まずは妊娠できない原因を必要最小限の検査でスクリーニングします。妊娠に向けてのタイミング指導、卵胞チェック、排卵誘発などの一般治療はもとより体外受精、顕微受精、受精卵凍結保存も実施しています。悩んでおられる患者さんに寄り添えるように、個々に対応しております。紹介状の持参が難しい方や、治療歴のない方も遠慮なく受診して頂けます。

診療日時・担当医

月曜日 沖村 浩之
火曜日 藤井 麻耶
水曜日 沖村 浩之

子宮内膜症外来

問診の段階で症状を詳しくお伺いします。その上で、問診、診察、検査なでの所見を総合的に判断しますが苦痛が少ないように特に配慮しています。

診療日時・担当医

火曜日 小芝明美
木曜日 楠木泉

当院の子宮鏡手術について

子宮鏡下手術とは?

子宮鏡下手術ではレゼクトスコープという子宮用の細い内視鏡を子宮の入り口から子宮内に挿入し、その先端についた電極を用いて、子宮内にできた子宮筋腫や子宮内膜ポリープの病変のみを切除します。
子宮鏡下手術とは?
細径子宮鏡を使用した場合は、外来にて子宮鏡手術を行うことが可能です。当院では小さな子宮内膜ポリープの切除や、持続する不正性器出血の原因診断に積極的に子宮鏡を利用しています。小さなポリープの場合は主に外来での日帰り手術を行なっております。
 腟からカメラを挿入するので、体表の切開を要する腹腔鏡手術や開腹手術に比べ術後の痛みが軽減されます。体表に傷も残りません。また、子宮の筋層は切らないので分娩時には帝王切開になる可能性が少なく,術後の入院期間を短縮できるなどのメリットがあります。

子宮鏡下手術で手術できる病気は?

①子宮筋腫(粘膜下筋腫)
子宮鏡手術で対応出来る筋腫は基本的には粘膜下筋腫という子宮の内腔側にできる筋腫です。粘膜下筋腫は小さな筋腫であっても、過多月経(生理の量が多い)や過長月経(生理が長く続く)といった症状が出やすく、手術が必要となる場合が多くなります。子宮鏡手術で、子宮の内腔に突出した筋腫を削ることにより、子宮を温存したままで、症状の緩和が期待できます。
②子宮内膜ポリープ
子宮の内膜にできるポリープで大きさは数ミリ大のものから大きなものでは数センチメートルになるものまであります。過多月経(生理の量が多い)や過長月経(生理が長く続く)の原因になることがあります。またこのような月経時の症状がなくても、受精卵が子宮内膜に着床するのを邪魔するので不妊症の原因にもなります。

子宮鏡下手術のメリット

①低侵襲でお腹に傷が残りません。
子宮鏡下手術ではお腹に切開をくわえないので、体に負担がかかりにくく、術後の痛みもほとんどありません。また、腟から器械を挿入するので、お腹に傷が残りません。また、入院期間も開腹手術や腹腔鏡手術に比べて短くなります。
②過多月経の症状が改善します。
子宮鏡下手術の対象となる粘膜下筋腫は、子宮の内腔にできるため、過多月経(生理の量が多い)の症状が出やすい特徴があります。手術により原因となる病変を治療することにより、症状が改善します。
③子宮を温存することができます。
粘膜下筋腫の病変のみを切除するので、子宮を温存が可能です。また、良く突出した粘膜下筋腫の手術では正常な子宮の筋層を傷つけることもほとんど無いので、手術後に妊娠した場合でも分娩は帝王切開をする必要がない場合がほとんどです。今後妊娠を希望するが、粘膜下筋腫を有する患者さんに適した手術法です。

子宮鏡下手術の欠点、デメリット

①手術できる筋腫に限界があります。
子宮鏡手術は子宮の内腔側に突出している粘膜下筋腫に対しては良い適応がありますが、子宮の筋層内にできた筋層内筋腫や、子宮の外側に向かって発育している漿膜下筋腫に対してはこの手術では対応出来ません。また、後で述べる水中毒の予防のため、手術時間は原則おおむね2時間以内としており、日本産科婦人科内視鏡学会のガイドラインでは約3cmまでの粘膜下筋腫を対象とします。つまり大きな子宮筋腫はこの方法では対応出来ませんが術式の工夫や、術前に女性ホルモンを抑制することにより筋腫を小さくすることにより、この基準を超える筋腫でも対応可能な場合があります。
②水中毒の危険性があります。
 子宮の中は通常空間がありませんが、レゼクトスコープから水を還流させることにより、子宮内腔をふくらませ、カメラの視野を確保します。この水の一部は手術中に切れた血管等から体内に吸収されます。あまりに沢山の水が吸収されますと、体内のナトリウム濃度が薄まり、水中毒という合併症を生じる可能性があります。この合併症を避けるために当院では手術時間を概ね2時間以内とし、それを超えてしまうような多数の病変がある場合は2回に分けて手術をすることもあります。
③子宮穿孔
まれな頻度で、レゼクトスコープが子宮に貫通し、穴が生じることがあります。このような合併症が起こった場合は子宮周辺臓器(小腸、大腸、膀胱等)にまで損傷が及んでいないか、開腹手術や腹腔鏡手術で確認し、万が一損傷がある場合は修復する必要があります。

当院で実施している子宮鏡手術の特徴

①積極的に外来での細径子宮鏡手術を実施しています。
当院では直径約5mmの細径硬性子宮鏡を用いた子宮内膜ポリープ切除術を積極的に実施しています。外来で鎮痛剤と傍頸管ブロックという局所麻酔法を併用して実施するため、疼痛はほとんどないか、あっても軽度です。細径子宮鏡を用いるため、術前に子宮頸管を広げる処置も不要で、手術の終了後は特に問題なければすぐに帰宅できます。約1cmまでの子宮内膜ポリープはこの方法で切除可能です。
子宮鏡下手術とは?
②術式を工夫することで、妊孕性に配慮した子宮鏡手術を実施しています。
大きな子宮内膜ポリープや子宮筋腫の子宮鏡手術では2泊3日〜3泊4日の入院を原則としています。当院で取り入れている術式では、子宮内膜の切開を最小限とし、子宮の収縮力を生かしながら子宮筋腫の切除を行なっています。術式の工夫により子宮の内腔にあまり飛び出していない筋腫であっても粘膜下筋腫であれば子宮鏡下に手術可能な場合が多いです。症例により、腹腔鏡と組み合わせ、筋腫核出を行なう場合もあります。
③子宮鏡手術の術後管理を工夫しています。
子宮鏡手術の術後管理では手術した子宮の内腔が癒着しないように配慮する必要があります。子宮内腔癒着はアッシャーマン症候群と呼ばれ、過少月経や不妊症の原因となることもあります。当院では術後1〜2ヶ月後に外来子宮鏡を行なっております。処置用の細径子宮鏡を用いることにより、癒着が生じている場合にもその場で解除することが可能です。

がん生殖医療外来

がん治療の進歩に伴い、がん患者さまの治療後のQOLに対する意識が変わりつつあります。若い患者さまにおいては、抗がん剤治療や放射線治療といったがん治療後に、妊娠する力(妊孕性)が低下したり損なわれる場合があります。
近年、がんに対する治療に先立って、卵子・精子・卵巣組織を凍結保存し、将来に妊娠できる可能性を残す治療(妊孕性温存療法)が確立されてきました。
妊孕性温存療法の話を聞いてみたいという方は、主治医の先生とご相談していただき、当科を受診してみてください。

妊孕性温存療法とは

がんに対する集学的治療のめざましい進歩に伴い、治療後の生活や人生に対する関心が高まってきています。特に若年がん患者様の多くは、抗がん剤治療や放射線治療に伴って妊娠に必要な臓器や細胞(卵巣や卵子、精巣や精子)がうまく働かなくなり、がんを克服できた後に妊娠しづらくなってしまうことがあります。
近年、抗がん剤や放射線を用いる治療の前に、卵子や精子、卵巣組織を凍結保存し、がんの治療が終わった後に妊娠できる可能性を残す方法が確立されてきました。このような方法を、妊孕性温存療法といいます。
妊孕性温存療法は以下のようにまとめられます。
胚凍結 未受精卵子凍結 卵巣組織凍結 精子凍結
女性 男性
対象年齢の目安 20歳頃〜40歳頃 20歳頃〜40歳頃 0歳〜40歳頃 思春期以降〜
婚姻状況 既婚のみ 未婚/既婚を問わず 未婚/既婚を問わず 未婚/既婚を問わず
必要な治療期間 4週間前後 4週間前後 1週間前後 数日
特徴 不妊診療では普及している。
未婚女性には実施できない。
未婚女性にも実施可能。 思春期以前の女児においても実施可能。
必要な治療期間が短い。
腹腔鏡手術が必要。
不妊診療では普及している。
凍結・融解後の精子の生存率は半分程度。
女性に対しては、現在広く普及している体外受精などの不妊治療を応用し、卵子や受精卵(胚)を凍結保存する方法があります。また、卵子が貯蔵されている卵巣組織自体を凍結保存する方法も開発されてきました。卵巣組織凍結は、必要な期間が短いこと、女児に対しても可能であることがメリットとして挙げられますが、腹腔鏡手術が必要になります。また、未だ研究段階の治療であり、その有効性については確立されていません。
男性に対しては、思春期以降の方には精子凍結が可能ですが、それ以前の男児に対する妊孕性温存療法は未だ確立されていません。

どのような患者様に妊孕性温存療法が可能でしょうか?

がん治療の長い歴史の中で、卵子や精子に対する抗がん剤治療や放射線治療の影響が少しずつ分かってきました。がんには多くの種類があり、それぞれのがんに対する治療内容も異なります。そのため、どのがんに対しどのような治療をするかで、どのくらい妊娠しづらくなるかも変わってきます。
また、妊孕性温存療法をすると、その分がん治療の開始が遅くなってしまいます。
妊孕性温存療法の実施に際しては、患者様にとって必要な治療が、将来の妊娠にどのくらいの影響があるのか、また、妊孕性温存療法のためにがん治療をどれくらい猶予しても大丈夫なのか、といったことを考える必要があります。がんは人生に関わる病気であり、患者様自身の治療を最優先する必要があります。そのため、残念ながら患者様によってはこの治療が行えない場合もあります。また、妊孕性温存療法を行っても将来確実に妊娠できるというわけではありません。

がん・生殖医療とは

Oncofertility(がん・生殖医療)とは、がん治療と妊娠をつなぐ橋のようなものとされています。妊孕性温存療法そのものを意味するだけではなく、がん患者様が将来の妊娠・出産に関して最良の選択を自己決定するために支援してゆく医療全般を指しています。
治療による将来の妊娠への影響について、また、妊孕性温存療法について話を聞いてみたいという患者様は、がん治療の主治医と相談し、受診してみてください。それぞれの患者様に応じたくわしい話をさせていただきます。
がんを患い、さらに将来のことまで考えることは患者様にとって大きな負担となります。しかし、治療に際して避けては通れない大切なことであり、できるだけサポートさせていただきたいと考えています。