生殖内分泌

月経に関わるトラブルや不妊でお悩みの女性のために

不妊外来

子作りを始めて半年で妊娠にいたらない場合は不妊検査を受けることをお勧めします。妊娠に向けての対症治療や体外受精、顕微受精、受精卵凍結保存も実施して います。紹介状の持参が難しい方や、治療歴のない方も遠慮なく受診して頂けます。

診療日時・担当医師
月曜日 北脇城
木曜日 楠木泉

子宮内膜症外来

問診の段階で症状を詳しくお伺いします。その上で、問診、診察、検査なでの所見を総合的に判断しますが苦痛が少ないように特に配慮しています。

診療日時・担当医師
火曜日 小芝明美
木曜日 楠木泉、小芝明美

子宮内膜症とは・・・

子宮内膜とは、子宮の内腔にある内張りの層のことです。つまり、受精卵が着床する場所であり、月経によって剥がれ落ちる膜のことです。この子宮内膜に似た細胞が子宮の外側つまりおなかの中に発生するのが「子宮内膜症」という病気です

この病巣が腹膜(おなかの内張りの膜)の上に発生したり、卵巣の中に古い血液が溜まって腫れる「卵巣チョコレート嚢胞」をつくったりします。また、もともと子宮や卵巣は腸と接触はしていますが、くっついてはいません。しかし「子宮内膜症」によってこれらが癒着してしまうことがあります。子宮自体が腫れて大きくなる「子宮腺筋症」や子宮の筋肉の腫瘍である「子宮筋腫」は別の病気ですが、しばしば「子宮内膜症」と同時に発生します。

子宮内膜症の症状

子宮内膜症は月経のある女性の10%がかかっているだろうと言われています。 子宮内膜症にかかっている女性の90%とほとんどの人が「月経痛」を訴えます。70%が月経時以外の「下腹痛」を訴え、その他「腰痛」「性交痛」「排便痛」なで痛みの症状を持っています。もう1つ大きい症状が「不妊」で、子宮内膜症にかかっている女性の約50%に伴います。

子宮内膜症の診断

子宮内膜症はおなかの中に発生する病気ですから、本来確実に診断するためには腹腔鏡や開腹などの手術が必要となります。しかし現実には簡単に手術をすることはできません。そこで、問診、診察、検査なでの所見を総合的に判断して、おそらく子宮内膜症であろうとする場合を「臨床子宮内膜症」とします。この診断精度を高めることが診療の第一歩として重要であることは言うまでもありません。当科では、まず問診の段階で症状を詳しくお伺いします。その上で診察を行いますが、苦痛が少ないように特に配慮しています。そして、超音波断層法やMRIなどの画像診断、血清CA-125値などあまり侵襲が強くない検査を行います。これらのデータと過去の多くのデータベースを照らし合わせて、より高い精度で「臨床子宮内膜症」を診断します。

子宮内膜症の治療

子宮内膜症の症状には、不妊、疼痛(痛み)、卵巣チョコレート嚢胞の3要因 があり、各々の患者がどの症状をお持ちかを詳細に分析します。2要因あるいは3要因ともに該当することもあります(図2)。 その上で、無治療での経過観察、薬物療法、手術療法、そして生殖補助技術 (不妊治療)の中から最も適切な治療方針を、患者様と十分にご相談のうえ選択します(図2)。

  • 1.不妊に対する治療法

    腹腔鏡下手術によって病巣を取り除くことによって、術後の妊娠率が上昇します。したがって腹腔鏡下手術が第一選択となります。これはお腹に穴を空けて、そこから差し込んだ鉗子と呼ばれる棒の先で手術をするものです。腹 腔鏡下手術のみにより30%の方が妊娠しています。 これに対して、薬物療法は子宮内膜症の病巣を小さくし、痛みを和らでる効果がありますが、残念ながら妊娠率を改善することはほとんどありません。体外受精、胚移植も有力な治療法です。しかし、子宮内膜症の存在によって妊娠率が低下します。体外受精周期の前にGnRHアゴニスト製剤で3~6か月の治療をすることによって、妊娠率が上昇します。 また、卵巣チョコレート嚢胞の影響については諸説ありますが、腹腔鏡下に嚢胞摘出術(病巣だけを取り除く手術)を行った後にGnRHアゴニスト製剤で前治療を行ったうえで体外受精を行う方法の妊娠率が最も高いようです。

  • 2.卵巣チョコレート嚢胞に対する治療法

    子宮内膜症は良性の疾患ですが、卵巣チョコレート嚢胞が0.7%の確率で悪性転化して卵巣癌になることに留意しなければなりません。当科では、嚢胞の長径と患者様の年齢・症状とによって、原則として経過観察、嚢胞摘出術、卵巣摘出術の3種類の治療法をご提案しています(表1)。

    内分泌療法は卵巣チョコレート嚢胞を若干縮小します。このため、嚢胞の進 展・再発の予防という意味では効果があります。しかし、内分泌療法は根本的な治療ではありません。これによって妊娠率を回復する効果もありませんし、かつ悪性化のリスクを回避できる証拠もありません。したがって、卵巣チョコレート嚢胞という単独の因子に対して内分泌療法は選択すべきではありません。

  • 3.疼痛に対する治療法

    子宮内膜症によってもたらされる痛みには、大別して月経時の痛みである月経痛、月経時以外の下腹部痛や腰痛などの非月経時慢性骨盤痛、そして性交時の深部の痛みである性交痛の3種類があります。この3種類について痛みの程度を、ビジュアル・アノログ・スケール(VA S)(図3)を用いて評価します。

    子宮内膜症は、女性ホルモンであるエストロゲン依存性に増殖・進展するため、閉経に伴ってその多くが自然に治癒します。薬物療法の中心は、この病態を利用した内分泌療法です。GnRHアゴニスト、ジエノゲスト、ダナゾール、中/低用量経口避妊薬{ピル=OC≒低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤(LEP)}などがありますが、これらにはそれぞれ長所と短所とがあります(表2)。

    疼痛を緩和するための対症療法として非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)や漢方薬も使用しています。薬物療法では十分に効果がない場合、不妊や卵巣チョコレート嚢胞を伴っている場合などでは、腹腔鏡下手術により病巣を取り除きます。

    • (A) GnRHアゴニスト

      子宮内膜症の内分泌療法の中心であるGnRHアゴニスト療法は、下垂体ゴナドトロピン分泌を抑制することによって、二次的に低エストロゲン状態を作り出し、これによって病巣を効果的に退縮させます。 副作用は主として低エストロゲンによってもたらされる症状です。病巣は萎縮しますが副作用が生じにくい範囲の血中エストロゲン濃度である30-50pg/mlに保つために、GnRHアゴニストとともにエストロゲンを同時投与する方法(アドバック療法)も行っています。 GnRHアゴニスト療法はよく効きますが、副作用の防止のため一般に6ヵ月を目途として終了します。しかし、これにより完治することは なく、投与終了後には多くが再発します。そこでGnRHアゴニストによる抑制効果を維持するために、当科では長期内分泌維持療法(図4)を行っています。これは6ヶ月のGnRHアゴニスト投与後に引き続いて、低用量のダナゾール、中/低用量OC(LEP)、あるいはジエノゲストを長期間にわたって投与し続ける方法です。これにより副作用を抑えつつ、病巣の再燃や症状の再発を長期にわたって防止することができます。

    • (B) ジエノゲスト

      19-ノルプロゲステロンの誘導体であり、プロゲステロン受容体に強い親和性と選択性を有します。強い黄体ホルモン活性と抗アンドロゲン作用をもちながら、経口投与可能というユニークな合成プロゲストーゲン製剤です。 ジエノゲストは、子宮内膜症性疼痛に対して強い抑制効果を有します。低エストロゲン症状の副作用が少ないため、長期投与が可能であることが利点です。

    • (C) 偽妊娠療法

      偽妊娠療法と中/低用量OC(LEP)は、いずれもエストロゲンとプロゲストーゲンの同時投与を原理とする方法であり、基本的に同じものです。これらは、無排卵・無月経をもたらすと同時に、子宮内膜および子宮内膜症組織に対する直接作用により組織の脱落膜化をもたらします。OCには月経痛を和らげる作用があるため、月経痛だけを有する場合には特に有効です。しかし、月経痛以外の慢性骨盤痛や性交痛に対しては緩和効果が乏しいため、この場合には他の治療法を選択します。低用量OCは、一相性にせよ三相性にせよ、21日間服用し、7日間休薬(あるいはプラセボ)するよう設計されている。これに対して、一相性OCを2~3ヶ月間連続的に服用して、その後に消退出血を起こし、再び連続投与を行うことによって月経の頻度を減らす連続投与法も多用しています。

    • (D) その他の内分泌療法

      このほか、ダナゾール、レボノルゲストレル放出型子宮内システム (LNG-IUS)、アロマターゼ阻害剤などがあり、症状に応じて使用しています。